1. 空き家問題が増える背景
近年、日本では人口減少や都市部への人口集中により、地方を中心に空き家が急増しています。総務省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、全国の空き家数は849万戸を超え、全住宅の13.8%に達しています。さらに2030年には空き家率が3軒に1軒になるという試算もあります。
空き家が増える要因は、親の住んでいた家を相続したが遠方に住んでいて利用しない、古い家なので売却や賃貸が難しい、解体には費用がかかるためそのままにしている、といったケースが多く見られます。こうした背景から「空き家管理サービス」への需要は年々高まっています。
2. 空き家を放置すると起きるリスク
空き家を長期間放置することには、次のような深刻なリスクがあります。
- 建物の劣化と修繕費増大
空き家は人が住んでいないため換気や掃除がされず、湿気がこもりやすくなります。結果としてカビや腐食、シロアリ被害が発生しやすくなり、修繕費が高額になる恐れがあります。 - 防犯上の危険
人の出入りがない家は、空き巣や放火、不法侵入者の標的となりやすいです。郵便物やチラシがポストに溜まっているだけで、不在が周囲に知られてしまいます。 - 近隣とのトラブル
庭木や雑草の繁茂、ゴミの不法投棄などで景観や衛生面が悪化し、近隣から苦情が寄せられることもあります。特に地方や住宅地では、空き家の管理不足が地域全体の価値を下げることにもつながります。 - 行政からの指導や税制の不利
「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、管理が不十分な空き家は「特定空家」に指定されることがあります。この指定を受けると固定資産税の住宅用地特例(最大1/6軽減)が適用されなくなり、税負担が増えることも。さらに最悪の場合は行政代執行による解体命令が出されるケースもあります。
3. 空き家管理サービスの具体的な業務
空き家管理サービスは、単なる見回りにとどまらず、以下のような幅広い作業を提供します。
- 定期巡回・建物チェック
月1回や隔月などのスケジュールで現地を訪問し、建物の外壁や屋根、窓ガラスの破損などを確認します。台風や地震後には臨時巡回を行うことも。 - 郵便物やチラシの整理
ポスト内の郵便物やチラシを整理・転送することで、防犯面の不安を軽減します。 - 換気・通水作業
窓を開けて新鮮な空気を入れ、キッチンや浴室、トイレなどの水道を流して排水トラップの乾燥を防ぎます。 - 簡易清掃や草刈り
掃き掃除や落ち葉の除去、庭木や雑草の手入れを行い、見た目を清潔に保ちます。 - 写真付き報告書の作成
巡回後は写真付きのレポートを郵送またはメールで送付し、遠方からでも安心して現状を確認できます。 - オプションサービス
害虫駆除や本格的なハウスクリーニング、設備の修繕、売却前のリフォームなども依頼可能です。
4. 専門家に依頼するメリット
司法書士や行政書士、不動産業者など、法律や不動産に精通した専門家が運営する空き家管理サービスを利用すると、次のような利点があります。
- 法務・税務・登記のワンストップ対応
空き家管理は、ただの「見回りサービス」では完結しないことが多いです。- 相続登記の義務化(2024年4月開始)
- 名義変更や売却のための法的手続き
- 相続税・固定資産税の相談
こうした手続きは、司法書士や行政書士、不動産の専門家であれば一括で相談できます。「管理」と「手続き」を別々に頼む必要がなく、余計な手間を減らせます。
- 資産価値の維持・活用提案
専門家が定期巡回を行うことで、建物や土地の状態を把握し、早期に修繕やリフォームの提案ができます。
また、売却や賃貸、空き家バンク登録、リノベーションなど、家の資産価値を高める戦略的な活用方法をアドバイスしてもらえるのも大きなメリットです。
- 近隣トラブル・行政指導の予防
管理不足で「特定空家」に指定されると税負担が増え、行政からの指導対象になります。専門家による定期管理は、雑草・ゴミ問題や景観悪化を防ぎ、地域との良好な関係を維持する助けになります。
- 防犯・安全面の安心
人の出入りがあることを示すことで、防犯性が向上します。窓やドアの破損、雨漏りなどの異変も早期発見でき、台風や地震後の臨時点検にも対応できるため、遠方の家主も安心です。
- 時間・精神的負担の軽減
遠方に住んでいると年に何度も実家を見に行くのは大変です。管理のための交通費や時間がかかり、精神的な負担も大きいものです。専門家に任せれば、報告書や写真で状況を把握でき、心配ごとが減ります。
- 万一のトラブルにも迅速対応
鍵の紛失や水漏れ、火災や台風被害など、もしものときにも専門家なら迅速な対応が可能です。行政や保険会社とのやり取りもサポートできるため、家主の負担を最小限にできます。
このように、専門家に依頼するメリットは「単なる掃除や見回りではなく、家と資産を総合的に守る仕組みを持てる」という点にあります。
5. 空き家管理を検討すべきケース
- 親の家を相続したが、遠方に住んでいる
- 実家を解体するかどうか迷っている
- 両親が施設に入所し、実家が無人になった
- 転勤や海外赴任で長期間家を空ける
- 高齢で管理が難しい
空き家は「いつか売ろう」「解体すればいい」と思っていても、放置すると劣化が進みます。管理を依頼するのは、実は早ければ早いほど資産を守ることにつながります。
6. 費用の目安と依頼の流れ
空き家管理の料金は地域や作業内容によって異なりますが、目安は以下の通りです。
- 月1回巡回プラン:5,000~10,000円程度
- 草刈りや剪定:1回あたり10,000円~
- ハウスクリーニング・害虫駆除:別途見積もり
依頼の流れは「問い合わせ → 現地確認 → 見積もり → 契約 → サービス開始」が一般的です。初回相談や見積もりは無料の業者が多く、契約前にしっかり内容を確認できます。
7. 空き家管理に活用できる制度や補助金
自治体によっては、空き家管理や解体、リフォームに関する補助金制度を用意しているところもあります。例えば金沢市では、空き家バンクに登録した空き家の改修費や、耐震化工事に対する助成が受けられる場合があります。
また、空き家を活用したシェアハウスや地域コミュニティ施設への転用を支援する制度もあり、ただ放置するよりも多様な活用方法を検討するチャンスになっています。
8. まとめ:早めの対策で空き家も資産に変わる
空き家は「放置すれば負担」「管理すれば資産」という大きな分岐点に立たされています。管理不足は劣化やトラブルの原因になりますが、専門家に依頼すれば法的手続きや売却、活用まで含めてトータルでサポートしてもらえます。
「相続した実家をどうすればいいかわからない」「遠方なので管理できない」と悩んでいる方は、まずは管理サービスの利用を検討しましょう。
空き家管理は単なる手間の軽減ではなく、家族の大切な資産を未来につなぐための一歩です。