任意後見制度とは、ご本人が十分な判断能力があるうちに、あらかじめ任意後見人受任者(任意後見人を引き受ける人)を誰にするかや、どのような内容をお願いするかを公正証書により契約で定めておく制度です。そして、ご本人が判断能力が不十分になったときに、任意後見人があらかじめお願いされた内容をご本人に代わって行う制度です。
任意後見人は、契約時には、まだ任意後見人として本人に代わり代理することはできません。本人の判断能力が低下したと判断したときは、任意後見人を受託した者がその旨を家庭裁判所に申し立てることが期待されています。裁判所は任意後見を開始する際は、任意後見監督人を選任し、任意後見人がその職務を開始すると同時に、任意後見監督人による監督を開始させます。
任意後見監督人は家庭裁判所によって選ばれます。その役割によって、どのような人を選ぶか判断されます。例えば、訴訟や複雑な法律行為等が予定されている場合は、第三者である弁護士、司法書士、社会福祉等の専門職や法律、福祉に関わる法人などが選ばれることが多くなっています。一方で本人に近い親族(直径血族及び兄弟姉妹)等は後見監督人になれません。
「財産管理に関する法律行為」をお願いすることができます。例えば、本人の預貯金の管理・払い戻し、不動産等の重要な財産の処分などをお願いすることができます。
「身上監護に関する事務」もお願いすることができます。例えば、介護サービスの契約締結、福祉関係施設への入所契約締結などです。
本人と任意後見受任者の合意(話し合い)によって、法律の趣旨に反しない限り、自由にお願いする内容を決めることができます。なお、本人の判断能力がなくなってから選ばれる法定後見人と違い、お願いできる内容をあらかじめ決めることができるのが、任意後見制度の最大の特徴です。
ご本人と任意後見受任者とで、公証役場に行く必要があります。法律の専門家である公証人が本人の真意を確認し確実な内容の契約が結ばれるようサポートします。
ただし、任意後見契約の中に事業承継や、投資不動産等の管理が含まれるなど複雑な事案では、弁護士、司法書士等の専門家の助言やサポートが必要な場合があります。
また、任意後見契約を結んだだけでは、任意後見人は法律行為を代理することはできません。本人の判断能力が低下した後、任意後見受任者等が家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立てをする必要があります。任意後見人が本人に代わって法律行為を代理できるのは、この任意後見監督人が選任されその就任を承諾された後となります。
任意後見人は任意後見監督人の監督下の置かれ、その職務を監督されることになります。
いいえ、ご本人の判断能力が低下した後、任意後見監督人の選任申立てができるのは、任意後見受任者だけではありません。他に、ご本人(任意後見契約のご本人)、その夫又は妻(配偶者)、四親等内の親族(本人から見て、いとこやその配偶者も申立人になれます)も申立ができます。
ご本人の住所地の管轄の家庭裁判所(一番近い家庭裁判所)に申立します。
申立には手数料が必要です。収入印紙800円分を申立用紙に貼付します。(消印はしないでください)
他に登記手数料として収入印紙1400円分が必要です。(貼付はしないでください)
また、連絡用として、所定の郵便切手が必要になりますが、これは各家庭裁判所によって、金額及び枚数が違いますので、各家庭裁判所にご確認ください。
なお、ご本人の判断能力について鑑定を要する必要がある場合には別途鑑定費用の負担が必要になる場合がありますので、ご注意ください。通常は申立書に添付するご本人の診断書で足りる場合が多いです。
・申立書
・ご本人の戸籍謄本
・任意後見契約公正証書の写し(コピー)
・ご本人の成年後見等に関する登記事項証明書(法務局で発行されます)
・ご本人の診断書(家庭裁判所が定める様式のものがあります。)
・ご本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書※未登記の場合は固定資産評価証明書、預貯金及び有価承継の残高が分かる書類(通帳写し、残高証明書等)等)
・任意後見監督人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍の附票※任意後見監督人の候補者が法人の場合には当該法人の登記事項証明書
これら以外にも、審理のために必要な場合は追加書類の提出が必要な場合があります。
また、各家庭裁判所によって、所定の書式や別途必要な書類がある場合があります。
はい、任意後見監督人から報酬の請求があった場合は、家庭裁判所の審判により、ご本人の財産から支払われることになります。
任意後見契約に報酬の規定がある場合、ご本人の財産から支払われることになります。任意後見監督人と違い、家庭裁判所の審判は必要ありません。
いわゆる任意後見VS法定後見ですが、任意後見監督人選任前後で結論が変わります。任意後見監督人選任前に、法定後見が開始した場合は、任意後見契約は影響を受けません。(任意後見契約は効力を維持します)しかし、任意後見監督人が選任された後に法定後見開始等の審判がされた場合は、任意後見契約は終了します。
任意後見は原則法定後見に優先されますが、任意後見監督人が選任された後(任意後見契約がその効力を生じた後)に法定後見人選任の申立てがされたときは、法定後見を利用することが本人の利益のために特に必要があると認められるときは、任意後見契約が取り消され、法定後見人が選任される場合があるので注意が必要です。(常に任意後見が優先される訳ではないです)