おひとりさまは特に注意!「ペットの終活」を金沢の行政書士が解説
「もし自分に万一のことがあったら、この子はどうなるのだろう」──犬や猫と暮らす方なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
ペットフード協会の2025年全国犬猫飼育実態調査によると、日本で飼育されている犬は約682万頭、猫は約885万頭。合計するとおよそ1,567万頭にのぼり、15歳未満の子どもの人口を上回る規模になっています。ペットの医療や食事の質が向上したことで犬猫の寿命も延びており、「ペットのほうが自分より長生きするかもしれない」という心配は、高齢の飼い主さまにとって決して他人事ではありません。
実は、何の備えもないまま飼い主が亡くなると、残されたペットが行き場を失ってしまうケースが少なくありません。この記事では、飼い主亡き後のペットを法的に守る3つの方法──負担付遺贈・負担付死因贈与・ペット信託──の仕組みと注意点を、金沢のいきいき行政書士事務所がわかりやすく解説します。
法律上、ペットは「相続」できない ── 何もしないとどうなるか
意外に思われるかもしれませんが、日本の民法上、ペットは「物」(動産)として扱われます。家族の一員であっても、法律の世界では貴金属や家具と同じ「財産」の扱いなのです。
したがって、飼い主が亡くなるとペットは相続財産の一部となり、相続人が所有権を引き継ぎます。相続人の中に快く世話を引き受けてくれる方がいれば問題は起きにくいのですが、次のような場合には深刻な事態になりかねません。
- 相続人が集合住宅住まいやアレルギーなどの事情で飼育できない
- 相続人同士で「誰が引き取るか」の押し付け合いになる
- そもそも相続人がいない(おひとりさまの場合)
また、ペットは「物」である以上、遺言書で「愛犬に預金を相続させる」と書いても法的な効力はありません。ペット自身は財産を受け取る主体になれないからです。ペットを守るには、「人」に財産を渡し、その人にペットの世話をしてもらう仕組みを生前に作っておく必要があります。その代表的な方法が、これからご紹介する3つです。
方法①:負担付遺贈 ── 遺言書で「世話をすること」を条件に財産を残す
負担付遺贈とは、遺言書によって「ペットの世話をしてもらうこと」を条件(負担)に、特定の人へ財産を渡す方法です。たとえば「愛猫の終生飼養を条件として、知人Aに金300万円を遺贈する」といった内容を遺言に定めます。
遺言書1通で完結するため、3つの方法の中では最も取り入れやすく、実務でも多く利用されています。ただし、次の点に注意が必要です。
注意点1:受遺者は遺贈を放棄できる
財産を受け取る側(受遺者)は、遺贈を放棄することができます(民法986条)。飼い主の死後に「やはり飼えない」と放棄されてしまうと、ペットは再び行き場を失います。遺言を作る前に、必ず引受先候補の承諾を得ておくことが大前提です。
注意点2:世話がきちんと行われるかの担保
受遺者が財産だけ受け取って世話を怠った場合、相続人や遺言執行者は期間を定めて履行を求め、それでも改善されなければ家庭裁判所に遺言の取消しを請求できます(民法1027条)。もっとも、こうした事後対応には時間がかかります。信頼できる遺言執行者を遺言で指定し、飼育状況を見守れる体制を作っておくことが実効性を高めるポイントです。
注意点3:金額設計と遺留分への配慮
遺贈額は、ペットの平均余命から見込まれるフード代・医療費・予備費などを積算して決めます。一方で、配偶者や子など一定の相続人には遺留分(最低限の取り分)があるため、遺贈額が大きすぎると遺留分侵害額請求の紛争に発展し、かえってペットの飼育費が争いに巻き込まれるおそれがあります。全体の財産バランスを踏まえた設計が欠かせません。
ポイント:負担付遺贈は、方式不備や紛争を防ぐため公正証書遺言で作成するのが安心です。当事務所では文案の作成から公証役場との調整までサポートしています。
方法②:負担付死因贈与 ── 生前の「契約」だから確実性が高い
負担付死因贈与とは、「自分が死んだら、ペットの世話をすることを条件に財産を贈与する」という内容を、飼い主と引受先との間で生前に契約しておく方法です。
遺言(負担付遺贈)が飼い主の一方的な意思表示であるのに対し、死因贈与は双方の合意による契約です。あらかじめ相手の承諾を得たうえで成立するため、「死後に放棄される」リスクを大きく減らせるのが最大のメリットです。
一方で、贈与者(飼い主)側は原則として生前いつでも撤回できるとされますが、受贈者がすでにペットの世話などの負担を相当程度果たしている場合には、特段の事情がない限り撤回できないとする最高裁判例(昭和57年4月30日)があります。生前から世話を分担してもらうケースでは、この点も踏まえた契約設計が必要です。
また、飼い主の死後に「本当に世話をしてくれているか」を契約当事者同士で確認し合うことができない、という構造的な弱点もあります。執行者・監督者的な役割を担う第三者を定める、後述のペット信託と組み合わせるなどの工夫で補うことが考えられます。契約書は後日の紛争防止のため、公正証書での作成をおすすめします。
方法③:ペット信託 ── 飼育費の管理・監督までカバーする仕組み
ペット信託とは、民事信託(家族信託)の仕組みをペットの飼育に応用したものです。おおまかな登場人物は次の3者です。
- 委託者:財産を託す人(=飼い主)
- 受託者:託された飼育費を管理し、契約に従って支払う人・法人
- 受益者:実際にペットを飼育し、飼育費を受け取る人(新しい飼い主や施設)
ペット自身は法律上受益者になれないため、「ペットの世話をする人」が受益者となる点がポイントです。飼育費は受託者が信託契約の目的に沿って管理し、飼育者へ計画的に支払われるため、「渡したお金が本当にペットのために使われるか」という負担付遺贈・死因贈与の弱点を補えるのが大きな特長です。
ペット信託ならではのメリット
- 信託監督人を置ける:飼育費の管理や飼育状況を第三者がチェックする体制を作れます。
- 死亡以外のリスクにも対応:認知症・長期入院・施設入居など、飼い主が「生きているけれど飼えない」状態になった時点から発動する設計が可能です。遺言や死因贈与は死後にしか効力が生じないため、これは信託ならではの強みです。
- 次の引受先まで指定できる:新しい飼い主に万一のことがあった場合の、さらに次の飼育者や施設を定めておくこともできます。
デメリット・注意点
契約設計が複雑になるぶん、専門家報酬などの初期費用は遺言単体より高くなる傾向があります。また、受託者となってくれる信頼できる人・法人の確保が前提です。信託は万能の仕組みではなく、相続人であるご家族の理解があってこそ円滑に機能しますので、遺言書と併用し、他の相続人にも配慮した全体設計を行うことが実務上とても重要です。
3つの方法の比較 ── どれを選べばいい?
| 負担付遺贈 | 負担付死因贈与 | ペット信託 | |
|---|---|---|---|
| 形式 | 遺言(単独行為) | 生前の契約 | 生前の信託契約 |
| 引受先の事前同意 | 不要(だが実務上は必須) | 必要 | 必要 |
| 放棄されるリスク | あり | 低い | 低い |
| 飼育費の使途管理 | 弱い | 弱い | 強い(受託者が管理) |
| 飼育状況の監督 | 遺言執行者等による | 仕組みとして弱い | 信託監督人を設定可能 |
| 認知症・入院への対応 | 不可(死後のみ) | 不可(死後のみ) | 可能 |
| 費用の目安 | 低め | 低め〜中 | 中〜高め |
ざっくり言えば、「信頼できる引受先が決まっていて、シンプルに備えたい」なら負担付遺贈(+事前承諾)、「お金の管理や生前のリスクまでしっかりカバーしたい」ならペット信託が向いています。財産規模・家族構成・ペットの年齢によって最適解は変わりますので、組み合わせも含めて検討しましょう。
引き取り手が身近にいない場合 ── 動物保護団体へ託すという選択肢
「頼める親族も友人もいない」という、おひとりさまの飼い主さまも増えています。その場合、動物保護活動を行う公益法人やNPO法人などに、飼育費相当の財産の遺贈とあわせてペットを託す方法があります。生命保険を活用して飼育費を準備するスキームを提供している団体もあります。
ただし、団体によって受入条件・必要費用・飼育環境は大きく異なります。パンフレットだけで判断せず、生前に複数の団体を比較し、実際の飼育環境を自分の目で確認しておくことを強くおすすめします。当事務所では、動物福祉団体への遺贈を組み込んだ遺言の設計についてもご相談を承っています。
金沢・石川で「ペットの終活」を相談するなら
ペットのための備えは、遺言書・贈与契約書・信託契約書といった書面を「法的に有効な形で」「他の相続人にも配慮して」作れるかどうかが成否を分けます。せっかくの想いが、方式の不備や遺留分トラブルで無駄になってしまっては元も子もありません。
いきいき行政書士事務所では、金沢市を中心に石川県全域で、遺言書の文案作成、負担付死因贈与契約書・死後事務委任契約書の作成、公正証書化のサポートまで一貫してお手伝いしています。動物福祉団体への遺贈設計の実務経験もございますので、「この子のために何を準備すればいいのか分からない」という段階からでも、どうぞお気軽にご相談ください。
また、当事務所は司法書士部門(いきいき司法書士事務所)と連携しているため、ご自宅などの不動産を信託財産に組み込む場合の信託登記や、相続発生後の相続登記・不動産の売却まで、窓口ひとつでワンストップ対応が可能です。「契約書は作ったけれど登記は別の専門家を探さなければ…」という手間がないのも、当事務所の強みです。
大切な家族の「その後」を、元気なうちに。
ペットの終活・遺言・信託のご相談はいきいき行政書士事務所へ
よくあるご質問
Q1. 遺言書でペットに直接財産を残すことはできますか?
できません。ペットは法律上、権利の主体になれないためです。飼育してくれる「人」に負担付遺贈をする、あるいはペット信託を設定するなど、人を介した仕組みで備える必要があります。
Q2. 自筆の遺言書でも負担付遺贈はできますか?
法律上は可能ですが、負担の内容(飼育条件・金額・監督方法)を正確に書けていないと実効性を欠くおそれがあり、方式不備で無効になるリスクもあります。紛争予防の観点から公正証書遺言をおすすめします。
Q3. 費用はどれくらいかかりますか?
選択する方法(遺言のみか、信託まで組むか)や財産の内容によって大きく変わります。当事務所では初回のご相談で、ご事情に合った方法と費用の見通しを丁寧にご説明していますので、まずはお問い合わせください。
※本記事は執筆時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説であり、個別の事案への適用を保証するものではありません。具体的な手続きについては専門家にご相談ください。

