2026年2月スタートの「所有不動産記録証明制度」を金沢の司法書士がやさしく解説します

こんにちは。金沢市の「いきいき司法書士事務所」の山田です。
梅雨入りし、金沢もすっきりしないお天気が続く季節になりましたね。雨の日はご自宅で過ごす時間が増えるかと思いますが、そんな時こそ、ご家族の将来や財産についてゆっくり考える良い機会かもしれません。
さて、先日、事務所にお越しになったお客様から、こんなご相談をいただきました。
「父が亡くなったんやけど、田舎の山とか畑とか、どこに何を持っとったか、さっぱり分からんくて…」
実はこのお悩み、当事務所に寄せられる相続のご相談の中でも、本当に、本当に多いんです。
ご自宅の土地建物は把握していても、「おじいちゃんの代から引き継いだままの山林」「昔、付き合いで買った別の市町村の土地」「親戚と共有になっている原野」などは、ご家族もまったく知らないまま、というケースが珍しくありません。
そんな「見つからない不動産」のお悩みを解決する心強い新制度が、2026年(令和8年)2月2日からスタートしました。その名も「所有不動産記録証明制度」です。
ちょっとお堅い名前ですが(汗)、私たち実務家にとっても、一般の皆さまにとっても、本当に頼もしい制度です。今日はこの制度の仕組みと使い方、手数料、そして「ここだけは気をつけて!」という注意点まで、できるだけ専門用語を使わずに、じっくりお話ししますね。少し長い記事になりますが、相続でお悩みの方、終活をお考えの方には、きっとお役に立てる内容です。お茶でも飲みながら、ゆっくりお読みください♪
所有不動産記録証明制度って、どんな制度?
ひとことで言うと、「この人が名義人になっている不動産を、全国まとめて一覧表にして証明書として発行してもらえる制度」です。
法務局に請求すると、登記名義人の「氏名」と「住所」をもとに全国の登記記録を一括検索し、該当する不動産をリストアップした「所有不動産記録証明書」を発行してくれます。
「え、今までそういう仕組みはなかったの?」と思われるかもしれませんね。実は、なかったんです。
これまでの不動産登記は、「土地や建物の所在地」から調べる仕組みでした。「金沢市〇〇町〇番の土地は誰のもの?」は調べられても、「山田太郎さんは全国にどんな不動産を持っている?」という”人”を起点にした調べ方は、できなかったんですね。
似た仕組みに、市町村ごとの固定資産税台帳である「名寄帳(なよせちょう)」がありますが、これは「その市町村内」の不動産しか分かりません。「そもそもどこの市町村にあるか見当もつかない」場合には、調べようがありませんでした。
| 比較ポイント | 所有不動産記録証明制度(新制度) | 名寄帳(固定資産税台帳) |
|---|---|---|
| 対象エリア | 全国(法務局で一括検索) | 各市町村のみ |
| 検索の基準 | 登記簿上の「氏名・住所」 | 課税台帳上の「所有者」 |
| 未登記建物 | 載らない | 載る場合がある |
なぜ今、この制度ができたの?
背景にあるのは「所有者不明土地問題」です。相続登記がされないまま放置され、登記簿を見ても今の所有者が分からない土地が全国で増え続け、その総面積は九州本島に匹敵するとも言われています。
この問題を解決するため、登記のルールはここ数年で大きく変わりました。
- 2024年4月:相続登記の義務化(不動産を相続したことを知った日から3年以内。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます)
- 2026年2月:所有不動産記録証明制度のスタート(今回のテーマ)
- 2026年4月:住所変更登記の義務化(変更から2年以内。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になり得ます)
相続登記が義務になった以上、「相続する不動産を漏れなく把握できる手段」が必要ですよね。そのためのインフラとして誕生したのが、この新制度というわけです。
誰が、どうやって請求するの?手数料は?
個人の財産情報を守るため、請求できる人は厳格に限られています。①ご本人(法人も可)、②相続人などの一般承継人、③その代理人(司法書士などの専門家や、委任状を受けた方)だけです。ご近所さんの資産を勝手に調べる、といったことはできません。
請求は、全国どこの法務局・地方法務局(支局・出張所を含む)でも可能で、窓口のほか郵送やオンラインでも請求できます。手数料は検索条件1件・証明書1通あたり、書面請求1,600円、オンライン請求なら郵送受取1,500円・窓口受取1,470円です。
ここで超・重要ポイントがあります。検索はあくまで「請求書に書いた氏名・住所」と「登記簿上の氏名・住所」が一致した不動産だけが抽出される、ということです。
結婚で名字が変わった方や引っ越しを重ねた方は、登記簿が「旧姓」や「昔の住所」のままになっていることが多く、現在の情報だけで検索すると「該当なし」となり、大切な財産を見落としかねません。過去の氏名・住所も検索条件に加えられますが、条件を増やした分だけ手数料も加算されます(例:条件4件×1通=6,400円)。
「父が若い頃の住所なんて分からない…」という場合は、「戸籍の附票(ふひょう)」で住所の履歴をたどれます。ただし、古い附票は保存期間の関係で取得できないこともあり、その場合は古い権利証(登記済証)などで補完する地道な調査が必要です。
また、相続人が請求する場合は、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍などで「自分が相続人であること」を証明する必要があります。本籍地が転々としていると書類集めだけで何週間もかかることも。当事務所では、戸籍収集から、その後の手続きが楽になる「法定相続情報一覧図」の作成まで、まるごとお引き受けしています。
この制度が役立つ場面
① 相続発生直後の財産調査:遺産分割協議(誰がどの財産を受け継ぐかの話し合い)が終わったあとに「実はもう一つ不動産があった!」となると、協議のやり直しや印鑑証明書の取り直しなど、ご家族の負担が倍増します。相続登記が義務化された今、見落としは過料のリスクにも直結しかねません。最初に全体像をバッチリつかんでおくことが、円満でスムーズな相続の第一歩です。
② 認知症対策・財産管理の準備:ご高齢の親御さんが認知症になると、不動産の売却や修繕ができなくなる「資産凍結」のリスクがあります。これを防ぐ成年後見制度や民事信託(家族信託)を検討する際も、「今どんな財産があるか」の正確な把握が、すべての出発点になります。財産管理を専門とする当事務所としても、本当にありがたい制度です。
③ 終活の第一歩:私自身、3人の子の父で、この春長男が大学進学で親元を離れたのを機に、教育資金や家族の将来、ライフプランについて夫婦で話す機会が増えました。お金や不動産のこと、そして家族への想いを元気なうちに「見える化」しておくことの大切さを、日々痛感しています。証明書を一覧にしてエンディングノートに挟んでおくだけでも、残されたご家族の負担は劇的に軽くなりますよ。
ただし、注意点も!過信は禁物です
注意点①:登記されていない建物は出てこない 未登記の建物はもちろん、表題登記(表示の登記)だけで所有権の登記がされていない建物も検索対象外です。現地確認や名寄帳との併用が安心です。
注意点②:先代名義のままだと検索できない 「亡くなった父」で検索しても、その土地が「おじいちゃん名義」のまま放置されていれば、お父様の名前では出てきません。
注意点③:読み解きには知識が必要 共有持分や複雑な権利関係など、証明書や登記簿を正確に読むには専門知識が要るケースもあります。この制度でも漏れはゼロにはできませんので、「証明書=財産のすべて」と思い込まないことが大切です。
実際にあった「見つからない不動産」のお話
私が経験した事例をご紹介します(守秘義務のため、内容は一部変えています)。
お父様を亡くされたお客様の相続手続きで、ご自宅と畑の登記準備を進め、遺産分割協議書の調印を目前にしていた矢先。遠方の市役所から、お父様宛ての固定資産税納税通知書がひょっこり届いたのです。調べると、バブル期に購入された別荘地で、ご家族は誰もその存在を知りませんでした。
幸い調印前だったので協議に加えて事なきを得ましたが、もし調印後に見つかっていたら、ご相続人全員にもう一度ご署名・実印でのご捺印をお願いして回ることになっていたところでした。この新制度があれば、こうした「あとから見つかる不動産」のヒヤリを、手続きの最初の段階でぐっと減らせます。
よくいただくご質問
Q. 元気な親の不動産を、子どもが調べることはできますか?
A. 親御さんがご存命の間は、原則としてご本人からの請求(またはご本人から委任を受けた代理人の請求)になります。お子さんが「親の財産を勝手に調べる」ことはできない仕組みです。終活の一環として、親御さんご本人に取得していただき、家族会議の資料にするのがおすすめです。
Q. 証明書はすぐにもらえますか?
A. 交付までの日数は法務局によって異なります。制度が始まったばかりで混み合っており、2週間ほどかかる場合もあるようです。相続放棄の検討など期限のある手続きと並行する場合は、早めの請求をおすすめします。
Q. 名寄帳はもう取らなくていいの?
A. いいえ、併用がおすすめです。名寄帳には未登記の建物が載ることがある一方、新制度は全国を一括検索できるという、それぞれの長所があります。状況に応じて両方を確認するのが、漏れを減らす一番の近道です。
「いらない土地」が見つかってしまったら?
「遠方の山林が出てきたけど、誰も管理できない…」というケースも、これから増えるはずです。選択肢としては、法務大臣の承認を得て国に土地を引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度(要件審査があり、審査手数料のほか、原則20万円からの負担金=10年分の管理費相当額が必要です)や、隣地の方への売却、自治体への相談などがあります。
当事務所は司法書士業務に加えて宅建業の免許も取得しており、「見つけて終わり」「登記して終わり」ではなく、無料査定や売却、国庫帰属制度の活用までワンストップでお手伝いできるのが強みです。
金沢・石川にお住まいの皆さまへ
石川県は、能登や加賀の山間部にご先祖さまからの土地をお持ちの方も多い地域です。「金沢に出てきて何十年。実家の周りの土地がどうなっとるか、よう分からん」というご相談もよくお受けします。この新制度なら、雪の季節に遠くの役所を回らずとも、金沢にいながら全体像をつかめます。便利な時代になりましたね^^
まとめ:まずは「全体像の把握」から
- 2026年2月2日から、全国の名義不動産を一覧で確認できる新制度がスタート
- 請求できるのは本人・相続人など・代理人のみ。全国どの法務局でも、郵送・オンラインでも請求可能
- 手数料は検索条件1件・1通あたり1,600円(書面の場合)。条件を増やすと加算
- 登記簿上の氏名・住所と一致しないと漏れるため、住所の変遷調査がカギ
- 未登記建物や先代名義の不動産は出てこない。名寄帳等との併用を
要するに、「ご自身やご家族の財産の全体像を、元気なうちに把握しておきましょう」ということ。そのための道具が、また一つ増えたのです。相続登記や住所変更登記の義務化と合わせて、登記簿の情報を「正しく、最新に」保っておくことが、将来のご家族への何よりの贈り物になる時代が来ています。
「うちの場合はどう調べればいいんやろ?」「親に終活の話、どう切り出せばいいんやろ?」と思われたら、一人で悩まず、お気軽にお声がけください。初回のご相談は無料、LINEやZoomでのオンライン相談、ご自宅への出張訪問にも対応しております。遠方のご親族と画面をつなぎながらお話しすることも可能です。
お客様の大切なご家族と、その「いきいき」とした暮らしを守るため、法律・不動産・ライフプランの面から全力でサポートさせていただきます!

