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身元引受人(身元保証人)について(老人ホーム等)

連帯保証人、身元引受人、身元保証人のイラスト

介護老人保健施設や介護付き有料老人ホームに入居する際、必要になるのが、身元引受人や身元保証人と言われる人達です。二人要求されることもあります。私が担当した事案では、身元保証人を二人要求されました。弁護士や司法書士が成年後見人等(保佐人、補助人を含む)になっている場合は、財産管理を責任をもって行うことや、資産に問題がないことなどから、交渉の上、免除してもらうことも多いです。このことは、病院に入院した場合も同じです。なお、成年後見等は身元引受人や身元保証人になることはできません。ただし、成年後見人等が親族の場合は、その親族の立場で身元引受人や身元保証人になることは多いでしょう。

身元引受人、身元保証人、連帯保証人、違いは?

身元引受人については、法律上の定義はありませんが、一般的に老人ホーム等に入居される際に要求される身元引受人に要求されることは、万が一の時にご遺体を引き取りに来てくれる、病気やケガなどで入院される際に、駆け付けてくれることなどです。

一方、身元保証人は一応、身元保証二関スル法律(身元保証法)という根拠があります。ただし、こちらの法律は就職の際の身元保証の意味合いが強いですが、介護施設等への入居の際の身元保証契約についても原則適用されます。参考までにご紹介します。

昭和八年法律第四十二号(身元保証ニ関スル法律)
第一条 引受、保証其ノ他名称ノ如何ヲ問ハズ期間ヲ定メズシテ被用者ノ行為ニ因リ使用者ノ受ケタル損害ヲ賠償スルコトヲ約スル身元保証契約ハ其ノ成立ノ日ヨリ三年間其ノ効力ヲ有ス但シ商工業見習者ノ身元保証契約ニ付テハ之ヲ五年トス
第二条 身元保証契約ノ期間ハ五年ヲ超ユルコトヲ得ズ若シ之ヨリ長キ期間ヲ定メタルトキハ其ノ期間ハ之ヲ五年ニ短縮ス
② 身元保証契約ハ之ヲ更新スルコトヲ得但シ其ノ期間ハ更新ノ時ヨリ五年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三条 使用者ハ左ノ場合ニ於テハ遅滞ナク身元保証人ニ通知スベシ
一 被用者ニ業務上不適任又ハ不誠実ナル事跡アリテ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ惹起スル虞アルコトヲ知リタルトキ
二 被用者ノ任務又ハ任地ヲ変更シ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ加重シ又ハ其ノ監督ヲ困難ナラシムルトキ
第四条 身元保証人前条ノ通知ヲ受ケタルトキハ将来ニ向テ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得身元保証人自ラ前条第一号及第二号ノ事実アリタルコトヲ知リタルトキ亦同ジ
第五条 裁判所ハ身元保証人ノ損害賠償ノ責任及其ノ金額ヲ定ムルニ付被用者ノ監督ニ関スル使用者ノ過失ノ有無、身元保証人ガ身元保証ヲ為スニ至リタル事由及之ヲ為スニ当リ用ヰタル注意ノ程度、被用者ノ任務又ハ身上ノ変化其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌ス
第六条 本法ノ規定ニ反スル特約ニシテ身元保証人ニ不利益ナルモノハ総テ之ヲ無効トス

特徴的なのは契約期間が最長でも5年間で、更新しなければ契約は失効することです。この点は連帯保証契約との大きな違いです。

連帯保証契約に期間は法定されていません。(特約で定めれば別ですが)

また、身元保証人については、民法の個人根保証の規制を受けることになります。

民法

第二目 個人根保証契約

(個人根保証契約の保証人の責任等)

第四百六十五条の二 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

契約内容として定めて極度額(上限額)の限度で、責任を負うこととなります。例えば、極度額100万円と定めた場合、損害賠償額(違約金や利息を含めた額)が120万円だったとしても、100万円を支払えば責任を果たしたことになります。

身元保証人の場合は、この極度額があることが特徴です。先に説明した期間同様、連帯保証人よりも責任が軽くなっています。

連帯保証人に要求されることは利用料の延滞や、施設又は入居者等の第三者に損害を与えた場合に、本人に連帯してその賠償責任を負うことです。連帯保証人には上記のとおり、期間や極度額(上限額)がありません。ただし、施設によっては、このあたりの定義があいまいになっていることも多いです。ですので、契約の際には、重要事項説明書をよく読み、連帯保証人として契約するのか、身元保証人として契約するのか、その場合の責任の範囲、上限額等をよく確認しておく必要があります。

結局、身元引受人(身元保証人)は何をする?

・ご逝去し退所する際のご遺体の引き取り

・入院時のつきそい、医師からの説明の立会い(親族の場合、医療行為の同意も)、医療費の支払い

・利用料等の不払いがあった場合、利用者に代わって支払う義務がある

・利用者が施設や利用者に対して損害を与えた場合、その損害賠償の責任を負う

司法書士
司法書士

ご自身がご親族などの身元保証人等になるときは、身元引受人、身元保証人、連帯保証人のどれになるのか、また、その期間と責任の限度はどれくらいになるか、よく確認してから、署名押印してくださいね!

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