— 会社設立から変更登記まで司法書士が解説—
はじめに
会社を設立するとき、また設立後に役員や本店所在地の変更があったときに必要となるのが**会社の登記(商業登記)**です。
「会社登記はどこまで自分でできるのか?」「司法書士に依頼すると何が違うのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、会社登記の全体像を司法書士の視点でわかりやすく解説し、経営者や起業家が最低限知っておくべきポイントをまとめます。

商業登記とは?
商業登記は、会社の基本情報を法務局に登録する制度です。会社の「戸籍簿」のようなもので、取引の相手や金融機関が信用調査のために参照します。
株式会社や合同会社などの法人を設立する際には、必ず商業登記を行う必要があります。
商業登記の役割:
- 会社の信用力を担保
- 取引先や銀行が会社情報を確認できる
- 株主や役員構成の透明性確保
- 法的な紛争防止
登記をしないとどうなる?
会社登記を怠ると、**過料(罰金のようなもの)**の対象となる可能性があります。例えば:
- 役員変更登記を2週間以内にしなければ、過料の可能性
- 本店移転や商号変更も同様に期限あり
また、登記が遅れると銀行融資や補助金申請時に不利益が生じることもあります。
会社の信用を守るためにも、登記は期限内に行うことが重要です。
会社設立登記の流れ
会社設立の登記は、次のステップで進みます。ここでは株式会社を例に説明します。
- 事業計画・商号の検討
- 商号(会社名)は、同一住所で同名不可。事前に法務局で確認。
- 目的(事業内容)も具体的に記載が必要。
- 定款の作成と認証
- 定款は会社の憲法のようなもの。公証役場で電子認証。
- 電子定款なら印紙代4万円が不要になりコスト削減。
- 資本金の払い込み
- 発起人の個人口座に入金し、通帳コピーなどを準備。
- 登記申請書の作成
- 会社設立登記申請書
- 発起人決定書
- 就任承諾書
- 登記すべき事項をまとめた別紙
- 法務局に申請
- 設立登記の申請を行うことで、会社が法的に誕生します。
合同会社(LLC)の場合
最近は小規模事業者やスタートアップで合同会社を選ぶ方も増えています。
メリットは次の通り:
- 設立コストが安い(登録免許税6万円)
- 組織運営が柔軟
- 株式会社より登記書類が簡単
ただし、社会的信用度は株式会社に比べると低いとされることもあります。
設立後の変更登記
会社は設立したら終わりではありません。経営を続ける中で、次のような変更があれば登記が必要です。
- 役員の就任・退任(2週間以内)
- 本店移転(2週間以内)
- 商号変更
- 目的変更
- 資本金の増減
- 解散・清算
これらを怠ると、先述のように過料の対象になります。
登記の注意点
1. 定款の内容に注意
目的の記載が曖昧だと、許認可申請で不備になることがあります。
例えば「建設業」「宅地建物取引業」など特定業種は事前確認が必要です。
2. 登録免許税の計算
株式会社は資本金の0.7%(最低15万円)。合同会社は6万円固定。
資本金額の設定次第でコストが変わるため、計画段階から検討すべきです。
3. 司法書士に依頼するメリット
- 書類作成や電子申請をすべて代行
- 法務局へのやり取り不要
- 電子定款で印紙代節約
- ミスが少なく、登記完了がスムーズ
よくある質問(Q&A)
Q. 個人事業主から会社化するベストタイミングは?
売上や利益が増えてきて節税効果が期待できるときや、取引先の信用確保が必要なときです。
Q. 自分で登記はできないの?
可能ですが、書類作成や法務局とのやり取りが複雑です。
コスト削減にはなりますが、初めての方は司法書士への依頼を検討すると安心です。
Q. 本店移転はどのくらいのコスト?
同一管轄なら3万円、他管轄なら6万円。
登記簿や定款の書き換えも必要です。
設立後の税務署や年金事務所への届け出手順
会社設立登記が完了したら、登記だけで終わりではありません。税務署・年金事務所・労働基準監督署・ハローワークなどへの届出が必要です。
司法書士が登記を終えた後、税理士や社労士と連携して行う流れが一般的です。
- 税務署(会社設立届出書)
- 設立登記完了後、2か月以内に提出
- 提出書類:会社設立届出書、定款コピー、登記事項証明書、印鑑証明書、設立時貸借対照表など
- 必要に応じて青色申告の承認申請書も提出します。
- 都道府県税事務所・市区町村役場
- 法人設立届出書を提出
- 地方法人税・事業税の申告のために必要です。
- 年金事務所(社会保険の新規適用)
- 会社設立と同時に社会保険(厚生年金・健康保険)の適用が必須
- 提出書類:健康保険・厚生年金保険新規適用届、被保険者資格取得届
- 法人の代表者・役員も強制加入です。
- 労働基準監督署・ハローワーク(労働保険・雇用保険の手続き)
- 従業員を雇う場合、労災保険や雇用保険の適用手続きが必要です。
- 従業員がいなくても、労災保険は代表者を含め加入できる場合があります。
司法書士に依頼するメリットの実例
会社登記は自分で行うことも可能ですが、司法書士に依頼すると下記のような具体的なメリットがあります。
実例1:電子定款認証で印紙代4万円削減
Aさんは株式会社を自力で設立しようとしましたが、紙の定款を作成したため4万円の印紙代が必要になりました。
司法書士に依頼すれば、電子定款により印紙代が不要になり、結果的に依頼料を差し引いても費用を抑えられるケースが多いです。
実例2:不備ゼロで登記スムーズ
B社は自力で登記書類を作成したものの、法務局から2度の補正指示を受け、登記完了が1か月以上遅れました。
司法書士に依頼すれば、専門知識により一度で申請が通りやすく、会社設立日を計画通りに設定できます。
実例3:創業融資や補助金のサポート
登記簿や定款の内容は融資・補助金の審査に影響することもあります。
C社は司法書士が作成した登記事項を活用し、設立直後の創業融資をスムーズに受けられた事例もあります。
専門家に依頼することで、事業開始時の資金計画も安心です。
実例4:税理士・社労士とのネットワーク
司法書士は、税理士・社労士など他士業と連携している場合が多く、登記完了後の届出・社会保険加入手続きもワンストップで進められます。
開業準備にかかる時間を大幅に削減できるのが大きなメリットです。
まとめ
会社登記は、会社を運営する上で欠かせない法的手続きです。
- 設立時はもちろん、役員変更や本店移転などでも登記が必要
- 遅れると過料や信用問題に発展
- 専門家である司法書士に依頼すると、コスト削減や迅速な登記が可能
これから起業を考えている方は、一度司法書士に相談してみましょう。
正しい登記の知識を持ち、計画的に会社運営を進めることが成功する経営の第一歩です。