最初にすること
財産を調査します。
まず、毎年5月位に送られてくる、「固定資産税納税通知書」というものを探します。ここには、各市町村ごとに固定資産税を納付している不動産が記載されています。この場合、注意すべきポイントは二つあります。
その市町村の不動産しか載っていません。他の市町村の不動産は、他の市町村が発行した固定資産税納税通知書にしか記載されていませんので注意が必要です。
固定資産評価額が0円のものは記載されていない場合があります。これは市町村にもよるのですが、固定資産税納税通知書には、地目や用途が公衆用道路になっている場合、固定資産評価額が0円となり、固定資産税納税通知書に記載されない場合があります。この場合、相続登記が漏れてしまうので注意が必要です。
上記の相続登記漏れを防ぐには、「名寄せ」というのを役所で取得します。これは、その名のとおり、名前で物件を寄せます。例えば、山田達也の名寄せを、金沢市で取得すると、」山田達也が、金沢市で所有している不動産」を全て載ってきます。固定資産税納税通知書と違い、固定資産評価額が0円のものも記載されます。これで、少なくとも特定の市町村(この場合は金沢市)での不動産の漏れは防げます。結論としては、相続登記をする前に、必ず、「名寄せ」を取得することが大事です。
次にすること
法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。
名寄せ等で、物件の所在地や家屋番号がわかったら、次は権利関係や面積などが記載された、登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得します。窓口に備え置いてある用紙に記入し、窓口に提出します。法務局によっては、端末に入力し請求できる場合があります。手数料は、1通(1物件)あたり600円です。印紙を購入し用紙に貼り付けます。物件数が多い場合は、かなり費用がかかってしまいますので、登記情報提供サービスの利用もご検討ください。こちらは1通あたり331円で取得できます。ただし、クレジットカードの登録等、事前準備が必要です。
登記事項証明書又は登記情報により、現在の登記名義人(所有者)が誰になっているか確認します。その方が亡くなっている場合、現在の相続人まで登記名義を移すことを相続登記と言います。これでスタート地点(現在の登記名義人)がわかりました。
その次にすること
戸籍を集めます
令和6年3月から全国の戸籍がお住まいの市町村で取得できるようになりましたので、郵送で申請する必要がなくなりました。
必要な戸籍は
基本的には以下です。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍
・被相続人の最後の住所が記載された住民票又は戸籍の附票
・各相続人の現在戸籍
・不動産を取得する相続人の住民票又は戸籍の附票
もし、相続人が亡くなっている場合は、
・その相続人の出生から死亡までの戸籍
も必要です。
よくわからない場合は、市役所(市民課)の窓口で、「相続登記に必要な戸籍を下さい」とおっしゃっていただければと思います。
ただし、お子さんのいらっしゃらない方が亡くなった場合や、ひいおじいちゃん、ひいひいおじいちゃんの相続登記などのような複雑な相続関係の場合は、かなり時間がかかるので、時間に余裕をもって、市役所に行ってくださいね。このような相続の場合、私たち専門家でも、関係図を手書きで書いて、うんうん唸りながら、戸籍をたどっていくので、窓口の方の負担はかなりのものだと思います。
いよいよ次は
相続関係説明図を作成します。
法定相続情報も作成するのでなくても良い気がしますが、戸籍の原本を返してほしい場合は、相続関係説明図を作成します。これを法務局に提出することにより、戸籍の原本を返してもらえます。家系図のようなもので、作成方法は法務局のHPなどでご確認ください。
これで相続人が確定しました。
いよいよ
遺産分割協議をします
相続人が確定したら、その相続人全員で遺産分割協議を行います。必ず全員で行う必要があります。一人でも抜けているとその遺産分割協議は無効になるので注意が必要です。
遺産分割協議では誰が、どの相続財産を取得するかを決めます。すんなり決まればいいですが、なかなか当事者だけで難しい場合は、家庭裁判所で行う遺産分割調停などの利用も考えなければなりません。ちなみに、司法書士が関与していた場合でも、遺産分割協議で紛争性が出てきてしまうと、それ以降、関与ができなくなってしまいます。ですので、最初に「紛争性はありませんか?」や、「遺産分割協議について、どなたかと意見の相違はありそうですか?」などとお聞きするのはそのためです。もし、当初から紛争性がある場合は、弁護士さんをご紹介することもありますので、おっしゃってくださいね。
これはちと難しい?!
遺産分割協議書を作成します
法務省のHPや、いろんなところで、遺産分割協議書の書式が出ているので、参考にすればそんなに難しくはありません。ただし、誤記載があると、相続登記ができなかったり、預金の解約ができなくなったりしますので、慎重に作成してください。間違いがあると、作成しなおしたり、全員から訂正印をもらう必要があるので、ご注意ください。
相続登記の場合ですと、欄外に全員から訂正印を事前にもらっておくと、軽微な誤りであれば、再度、訂正印をもらわずに済みます。ただし、どこまでが軽微な誤りであるか、どこまでの範囲で訂正できるかは、難しい判断となりますので、作り直すか、全員から訂正印をもらった方が無難です。
最後に
相続登記を申請します
登記の申請書は法務省のHPで掲載されていますので、それを参考になさってください。
ここまで来たら、念のため、法務局での登記相談を利用なさって、最終確認をなさったらいいかも知れません。登記相談は事前予約が必要なので電話等で予約上、ご相談なさってください。最初の段階で相談されても、もちろんいいと思いますが、ある程度完成させてから相談なさった方が、具体的な指摘をいただけます。