遺言による相続後、相続人に成年後見人が選任された場合、
その遺言により、成年被後見人が、遺留分を侵害されているときには、
他の相続人は、遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)をされる恐れがあります。
例えば、被相続人(父)、相続人(母)、相続人(子)がいるとします。
生前、父は子へ、多くの財産を贈与しました。
一方、全ての財産を、母に相続させる遺言をしました。
そんなある日、子が不慮の事故により、意思能力を失いました。
父が失意のため病気になり、亡くなります。
遺言により、母は、全ての財産を相続します。
その後、子に成年後見人が選任されました。
その成年後見人は、子の遺留分が侵害されている場合、母に遺留分侵害額請求をするでしょうか?
原則します。
原則と言ったのは、
例えば、さかのぼって父が亡くなる10年内に、子が多額の生前贈与を受けており、そもそも、遺留分を侵害していないとか、
遺留分額侵害請求による、経済的なメリットを、はるかに上回るデメリットが、存在しているなど、特別な事情がある場合は、しない事も考えられます。
その場合でも、裁判所や親族と協議して、慎重に決めると思います。
遺留分侵害額請求権は、遺留分を侵害された相続人の権利ですので、行使する事は、悪いことではありません。
しかし、せっかく被相続人が、もめないようにした、生前贈与や遺言が、あだとなり、余計にもめることにもなりかねません。
子に意思能力があれば、遺留分侵害額請求など、しなかったかもしれません。
しかし、成年後見人は、本人の財産管理について、善管注意義務を負うため、本人の不利益になることはできません。
したがって、よほどの事情がない限り、成年後見人は、母に対して、遺留分侵害額請求を行います。
遺言と生前贈与は、慎重にという話でした。